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紅葉の季節、 自然と触れ合うこと

今年の秋は例年より紅葉が遅く、「まだかな」と待っている間に、あっという間に散ってしまいましたね。
忙しい日々の中で、ふと色づいた木々に目を奪われる瞬間、少し心が軽くなるのを感じた方も多いのではないでしょうか。

この「自然に触れる」「自然を眺める」という行為は、メンタルヘルスに良い影響を与えることが多くの研究で示されています。

そのメカニズムとしては


例えば、都会の町の景色よりも緑の森林を眺めると、副交感神経の活動が約1.5倍に増加し心身を落ち着かせ、
ストレスホルモンは約13%減少すると言われています。
さらに驚くことに、花の画像を見るだけでもストレスホルモンが約21%減少すると報告されています。
また、川のせせらぎや鳥のさえずりなどの自然の音にもリラックス効果があると言われています。

私たちは日常生活のなかで、資料作成、患者対応、集中力と注意力を必要とすることを繰り返しています。
この「注意を意図的に集中させ続ける状態」は、精神的疲労の原因となり、心のエネルギーを消耗させます。


心理学者 Kaplan らが提唱した注意回復理論では、自然環境が疲労回復に重要な役割を果たすと説明されています。

日常で必要とされる「選択的注意」は、意識的に集中する力のことです。
一方で、紅葉の美しい景色に「つい見とれてしまう」ような瞬間は、
意識して集中しなくても自然に心を引きつけられるような魅了(fascination)が働いています。

この魅了が生じると、頭と心が休息する余白が生まれ、疲労回復が促進されるのです。
さらに、日常の煩雑さから一時的に離れる逃避(being away)という要素も、注意の回復を助けます。
単なる遠出だけでなく、意識を別の場所に向けることも逃避の一つです。

山、川、空、鳥の声。
自然の中には「日常を忘れさせる逃避」と「心を奪われる魅了」が豊富に含まれています。
これらは、心の回復装置として働く環境でもあるのです。


紅葉を見逃してしまったとしても、自然と触れ合う方法はたくさんあります。パソコンやスマホの背景を自然の写真にしたり、通勤中に空や街路樹に目を向けるといっとことだととりいれやすのではないでしょうか。

遠くまで出かけなくても、身近な自然が心の回復を支えてくれます。
忙しい毎日の中で、ほんの一瞬でも自然に心を向けてみてください。

参考文献


芝田征司 (2013). 自然環境の心理学—自然への選好と心理的つながり、自然による回復効果—. 環境心理学研究, 1(1).