先日、奈良と和歌山の県境にある「谷瀬のつり橋」を訪れました。日本有数の長さを誇る歩行者専用の吊り橋で、足元は金網、下には深い渓谷が広がります。歩くたびに橋が揺れ、その揺れが中央に向かって共鳴し立っているだけでもバランスを取るのが難しくなるほどです。
足元を見ていると、橋の揺れが気になって仕方なく、不安定さに飲み込まれそうになります。でも、ふと顔を上げて遠くを見ると、不思議と足が前に出るようになりました。渡り切った先の景色を目指して一歩ずつ歩くと、揺れは消えなくても、振り回されることは少なくなるのです。
この体験をしながら、日々の仕事や変化の中でも同じだなと感じました。私たちは、慣れない挑戦や予測できない状況の中で、揺れを感じながら歩いています。不安になって足元ばかり見ていると、一歩踏み出すのが怖くなる。でも、「この先に何を目指したいのか」「どんなふうにありたいのか」を見据えると、不安定さの中でも、自分のペースで歩いていける気がします。
揺れは不快なものではなく、いまこの瞬間を生きている証かもしれません。風に揺れる景色も楽しみながら、自分の歩幅で、吊り橋を渡っていこうと思います。